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いつでも会える

 

 

 

キャディーは、平成2年に生後45日でケーキ箱のようなものに入って我が家にやってきた。まだまだ本当に小さくて最初はミルクしか飲めなかった。そして、たくさんご飯を食べて、たくさん私達と遊んで、どんどんどんどん大きくなっていった。後に、キャバリアの平均体重をはるかに上回る巨体となったが、おデブというわけでもなく、バランス良く生長した為、セントバーナードの子犬とまちがわれることもしばしばあった。

 

キャディーはやんちゃないたずらっ子で私達はずいぶん手を焼いたものだった。パピーウォーカーをしていた、ラブラドールレトリバーのアバロンと共謀して、我が家を荒らしまくったこともあった。外出から帰ってきた私達は、玄関を入って呆然。花瓶は割れ、水や花は床に散らばり、置いてあったドッグフードの袋は食べ散らかした形跡が。2匹とも、上目づかいで、どうしよう・・・と困惑した顔を見せていた。そんな2匹も、アバロンが盲導犬の訓練を始めるために、お別れした。わずか2年だけど、一生忘れない思い出ができた。

 

いっぱい、いっぱい、いろんな所に一緒に行った。車に乗せて旅行に行ったこともあったし、週末はいつも父母に遠出に連れて行ってもらっていた。車と海が大好きで、御宿までの道のり2時間近くずっと窓に貼りついて外の景色を眺めていた。海に着くと、冬でもザブザブ水の中に入ってしまう元気ものだった。女の子のビキニをはずしてしまったことも…。人が大好きで、すれ違う人、皆に愛嬌をだしていて、たくさんの人達に可愛がってもらっていた。

 

居て当たり前。姿が見えないと、こっちが落ち着かなくなってしまう。私にとっては、ともだち?おとうと?こども?ううん、言葉では言い表せないかけがえのない存在だった。深夜に、急にトイレに行きたくなったキャディーに起こされても、ぜんぜん平気。でも他の人だったら怒る、そんなかんじ?

 

そんなキャディーが、昨年(平成10年12月)急にご飯を残すようになった。ぜったい食べ物を残さないコが。町の獣医に連れて行ったが、風邪で食欲がないのでは、とのこと。もらった薬を飲ませても良くならない。どんどん食べる量が減っていき、苦しそうにゼーゼー呼吸をするようになってきた。町の獣医に通うが良くならない。いつも家の中で、誰かの側にくっついているキャディーが、ひとりで寝ていることが多くなった。

 

ある日、町の獣医から 大学病院で診てもらってはどうか、と言われた。すぐ連絡をとるが、新患は年明けでないと診られない、と断られる。いくつか探し、12月の中旬に神奈川県の某大学病院付属家畜病院まで連れて行った。遠い道のりだったが、おとなしくしていた。そしてそれから数時間で検査の結果が出た。

 

悪性リンパ腫。ステージ5。末期。
延命治療をしますか?

 

何もかもが信じられない。きゃんちゃんが?この先生達は何を言っている
の?
先生達は、この状態でこんなに元気なのが考えられないと言っていた。そんな先生たちにも、しっぽを振ってなぜてーなぜてーといっているきゃんちゃん。年明けに、腫瘍科を紹介するといわれた。

 

延命治療―ステロイドと抗がん剤の投与。
効果は絶大だが副作用も非常に大きい。副作用で、あっという間に…ということもあるという。
キャディーの真っ白く細い前腕の血管にドレーンが入れられた。そして包帯で巻かれた。今後、薬物はここから注入するという。

 

痛いよね。ごめんね、きゃんちゃん。ごめんね。涙が溢れ出す。どうしたの??という顔で首をかしげてじっと私の顔を見あげる。

 

ペットショップで、子犬用の離乳食や液体の栄養剤をたくさん買う。
きゃんちゃん、どれなら食べられそう…?
ステロイドの錠剤を4粒飲ませるが、次第に感づき始めた。警戒して食べようとしなくなった、匂いをしきりにかぐようになった。毎日違う方法で何とか飲ませるが、普段なんでもパクパク食べていたコがここまで嫌がると、少しでも楽になるように、という思いで飲ませているのが、逆に苦痛を与えているような気がしてきた。
キャディーが望んでいることは―。

 

12月下旬、ほぼ寝たきりになった。でも目はしっかりと開いているし、しっぽも振る。動けないんだ。目で私達の動きをずっと追っている。夜も眠れないようで、何度も体勢を変えている。いつも私の部屋か両親の部屋で寝ていたが、ある朝、どこにも姿が見えない。緊張して探すと、テレビに後ろに居た。今まで何年間もそんなところで寝たことなんかないのに…。どうして?死に場所を探しているの…?だめだよ。頑張って。

 

2度目の抗がん剤の投与を受けたところで、大学病院は年末休みに入ってしまった。 近所の獣医と頻繁に連絡をとり、点滴をしてもらった。
でも……。良くなることはなかった。

 

 

 

年を越した平成11年1月4日

キャディーは、我が家で家族と先生に見守られ、天国にいった。

 

 

 

体が冷たくなっていった。肉付きが良かったのに、すっかりやせ細ってしまった。前足からずっと挿入されていたドレーンをはずしてもらうように先生にお願いした。鈍い色の血が吹き出た。

 

私は、声をあげて泣き続けた。一睡もしないうちに朝が来て、お寺の人が引き取りに来た。冷たく、堅くなった全身を優しくなでた。絹糸のような柔らかい毛並みだった。お別れを言う。真っ白い箱に入れられた。連れて行かないで、返して、と叫びたかった。

 

私達は、たくさんのことを一緒にしてきた。言葉は通じないけれど、気持ちはすごく通じていた。でも、これからも私の記憶の中、思いでの中にきゃんちゃんはずっとずっと居る。いっぱい尻尾を振ってくれてありがとう。

 

ふと思い出せば……いつでも会えるよね。

 

 

 

    * その後、お寺から引き取り、きゃんちゃんは大好きだった海であそんでいます。

 

 

 

 

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